温泉と料理を心ゆくまで楽しんだ。
あとはもう、寝るだけだ。
貸切露天風呂から部屋に戻ると、ドッと疲れが押し寄せた。
敷かれた布団に横たわる。
普段、ベッドで寝ているため、畳に敷かれた布団は少し硬く感じる。
しかし、その硬さが、体の歪みを教えてくれているような気がした。
布団の上でストレッチをする。
温泉で温めてほぐした筋肉を引き延ばす。
日常的に同姿勢でいることが多く、身体中が凝り固まっている。
首凝り肩凝り腰痛の三重苦だ。
そんな私の体が、じんわりと弛緩していく。
これが温泉旅館の醍醐味だ。
同年代で、温泉旅館なんか行く意味がわからないという人がいるが、この心地よさを知らないのだろうと思う。
目の奥には眠気が鈍いモヤのように溜まっているのが感じられる。
寝るまでの工程を、ひとつひとつ何倍も時間をかけて行うことで、肉体的にも精神的にもフルスロットルで回していたエンジンが、穏やかに減速していくような感覚になる。
これが、本当のリラックスということだ。
平日の夜に軽くストレッチをしたり瞑想をしたりすることで得られるリラックスとは天地の差だ。
この本当のリラックスが、私には時折必要なのだと再認識する。
そうして、穏やかな心境で、消灯した。
しかし、眠れなかった。
私は普段、耳栓とアイマスクをして無灯無音状態で寝ることに慣れているため、ほんの些細な光が目に入ることや、川の音が聞こえるのが気になってしまって仕方ないのだ。
耳栓とアイマスクを持ってくるべきだった。
数時間、布団の上でゴロゴロして、ようやく入眠できた。
四万温泉で迎えた朝は実に清々しかった。
朝一番で聞く四万川の音は耳に心地よい。マルーン5のサンデーモーニングくらい心地よい。
私は薬師の湯で朝風呂に入り、はなちょは部屋で身支度を整えてから、朝食会場へ向かった。
朝食会場は夕食と同じ場所である。
メニューはこの写真の通りだ。
鍋は、湯豆腐と蕎麦である。濃すぎず、薄すぎず、朝にぴったりの味加減だ。
それと、焼き魚が美味しい。何の魚かわからないが、骨までポリポリ食べられるように調理されていて、かぶりつけるのが嬉しい。
朝のボケっとした頭で身をほぐして骨を外して食べるのは難儀だからだ。
行き届いた気遣いに感動した。
いつも朝はそれほど食べられない私でも、美味しい美味しいと言いながら食べていたら、完食してしまった。
食後は、改めて朝風呂に行く。今度は露天風呂だ。
昨日は私が四万川の湯に入り、はなちょはお題目の湯に入ったが、今は男女が入れ替わっているので、私はお題目の湯に入り、はなちょは四万川の湯に入れる。
名前についてはさほど気にしていなかったが、温泉に入っていってみると、ああそういうことかと合点がいった。
温泉の奥に巨大な岩があり、そこに南無妙法蓮華経のお題目が彫られているのだ。
なかなかの壮観である。
そのお題目の前に座り、心の中で南無妙法蓮華経と何度か唱えた。
四万やまぐち館は、ひとつひとつの温泉にそれぞれの工夫が施してあって、入るたびに驚き、楽しい。
最後まで大満足の旅館だった。
次回に続く
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