【ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由】記事まとめ

記憶法

 

 驚異的な記憶力を手に入れるための脳科学的なアプローチやプロの手法を紹介しつつ、記憶力の可能性を著者自ら追究した一冊です。最初は、本当にごく平凡な記憶力の著者が、信じられないような記憶力を身に付けていくストーリーには、圧倒されるとともに興奮を覚えます。

 

 

人間が情報を処理する力の限界

 新しい思考や情報は、脳に入ってきてすぐに長期記憶として格納されるわけではなく、仮の場所に置かれます。これは「作業記憶」として知られているもので、現時点で意識の中にある雑多なことを格納しておく脳のシステムです。

 一時保管場所ということですね。ここまで読んだくださった皆さんは、ここでいう「作業記憶」という言葉の意味について、まだ読んだばかりなので、「現時点で意識の中にある雑多なことを格納しておく脳のシステム。一時保管場所」と憶えていると思いますが、1週間後、1か月後に思い出そうとしても、だんだん思い出せなくなっていると思います。

 パソコンでいえば、「長期記憶」=「ハードディスク」、「短期記憶」=「メモリ」です。

 新しい思考や情報は、一度短期記憶に置かれ、その後、長期記憶に格納するか忘れるかの処理がなされます。私の場合、「これは憶えるぞ!」と思っている時の方が「忘れる」処理がされがちです。ほとんどの情報が長期記憶にはいかないようになっているので、脳にエラーが発生しているのだと思います。

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 そして重要なことは、この短期記憶の容量がどうやら「7」しかないようだということです。この容量には個人差もあって、5個しか記憶できない人もいれば、9個まで憶えられるよという人もいるようです。

 それにしても容量「7」とは、あまりにも少ないと思えますが、携帯の電話番号11桁だって簡単には憶えられないのだから、確かにそれくらいしかないのでしょうね。

 さらに、この容量「7」の短期記憶にいれた情報には時間制限もあり、ほんの数秒で気が散ったりすれば、まったく保持できません。

 試しに、数字でも、適当に目についた単語でも、憶えようとしてみるとわかります。確かにだいたい7つくらいを憶えるのが限界です。

 マジカルナンバー7については、「記憶力のいい人」も同じです。短期記憶の容量がだいたい7つくらいだというのは誰でも変わらない中で、記憶力のいい人というのは、その短期記憶を上手く使ったり、すぐに長期記憶に保管できるようにしたり、あるいは直接、長期記憶に保管できる方法を実践している人たちのことを言うのです。

 本書では、その方法を身に付け、全米記憶力チャンピオンを目指すストーリーが紹介されています。

 

記憶法「チャンキング」

チャンキングとは

 チャンキングは、「憶えるアイテムのサイズを大きくすることによって、憶えるアイテムの数を減らす方法」です。

 要は、1つ1つの情報の断片を、類似性で一括りにしたり、すでに自分の長期記憶の中にある情報を使って大きなカテゴリーに入れてしまう方法です。

 チャンクとは、「かたまり」を意味します。

 具体的な例示を見ていきましょう。

具体例1「文字列のチャンキング」

 HEADSHOULDERSKNEESTOES、という22個のアルファベットを憶えてみましょう。

 えいちいーえーでぃーえす…と1つの1つのアルファベットを憶えていくやり方では、やはり7個程度までを憶えるのが限界でしょう。

 しかし、ここで、自分の長期記憶にある英単語の情報と、上記の22個のアルファベットを結びつけてみます。

 HEAD(頭)SHOULDERS(肩)KNEES(膝)TOES(つま先)と4つの英単語に分けて憶えれば、驚くほど簡単に憶えられます。

 これが「チャンキング」です。暗記をする際には自然とこのテクニックを使っているという方もいらっしゃると思います。

具体例2「数列のチャンキング」

 本書で例示されている数列とは違いますが、110311950117160414という18桁の数字を完全に憶えるのは困難です。

 ただ、これを110311/950117/160414の3つに分け、「日本を大地震が襲った日」というチャンクにすれば、日本人としてもはや忘れろと言われても忘れられない情報になります。

チャンキングの極意

 今まで見てきたとおり、チャンキングは、意味がないように思える情報を、すでに自分の長期記憶の中に格納されている情報を使って置き換える方法です。

 この、すでに憶えている情報を使って憶えるというテクニックが重要です。

 完全に置き換えることができなかったとしても、「◯◯に近い数字」とか「◯◯という言葉に似た文字列」といった、自分にとって意味のあるフィルターを通すことで、情報を焼き付けることができるのです。

棋士のチャンキング

 将棋の棋士は、一局の駒の動きを全て完全に記憶していて、盤面を再現することができます。

 彼らは、100手以上にも及ぶ駒の動きを、1つ1つ記憶しているのでしょつか?

 それは、違います。

 チェスの達人に、駒をランダムに配置きた盤面を記憶してもらったところ、その盤面に対する彼らの記憶力は、初心者より少し良い程度で、7個程度の駒の位置を再現する記憶力しかなかったというテスト結果があります。

 それは、将棋でも囲碁でも同じでしょう。無意味に配置された盤面を憶えることにおいては、プロも初心者もたいして変わりはないのです。

 ではなぜ、棋士たちは100手以上の駒の動きを完璧に再現することができるのでしょうか?

 彼らは、膨大な数の棋譜を勉強し、長期記憶に置いています。

 その長期記憶に保存した膨大な棋譜のパターンを使って、一局の流れをチャンキングして憶えているのです。

 皆さんも、7つ程度より多くの情報を憶えなければいけない機会がありましたら、「チャンキング」を試してみてはいかがでしょうか。

 

記憶法「記憶の宮殿」

「記憶の宮殿」の作り方

 この記憶法では、頭の中に細部まで思い描けるほどよく知っている想像しやすい場所の記憶が必要です。

 自宅や毎日通る通勤路、通学路などは使いやすいと思います。宮殿といっても、建物である必要はありません。

 自分自身の体の部位や駅の路線や時計の文字盤でもいいです。

 とにかく、頭の中に簡単に思い描けて、ある場所から次の場所へ移る際の順番がわかりやすいものを用意します。

 ある場所から次の場所へ移る際の順番がわかりやすいとは、

 時計盤であれば、1から12までの順番のこと、

 通勤路であれば、自宅から職場までに目にする建物や看板の順番のこと、

 自宅であれば、自分が自宅を思い描いた時、一番自然に歩き回る順番(例:玄関→リビング→キッチン→寝室→トイレ→浴室)のことです。

 次に、憶えたいものを、その場所を順番に思い描きながら、置いていきます

 これで、「記憶の宮殿」の完成です。

 つまり、簡単に言えば憶えたいものを頭の中に思い描いた場所に置いていく」それだけです。

 そして、思い出す時はその場所を頭の中でもう一度たどればいいのです。

「記憶の宮殿」活用のコツ

 「記憶の宮殿」に憶えたいことを定着させるコツについて、本書でいくつか紹介されていますので、抜き出して列挙します。

・憶えたいものを、あらゆる感覚を駆使してイメージすること。視覚だけでなく、嗅覚や聴覚、個人的に感じるイメージなど、最大限に集中してそのものをイメージすることで、定着しやすくなる。

・憶えたいもののイメージは、面白くて、下劣で、奇想天外なものほどいい。普通では考えられない、すごいこと、信じられないこと笑えるようなこと、そういった鮮やかなイメージを作ること。

・動かないものは擬人化してイメージすること。そして印象的な動きをつけて、目立つように飾り立てること。

「記憶の宮殿」を作ってみた

 私なりの記憶の宮殿を作ってみました。憶えたいものは、買い物リストです。宮殿は、自宅にします。

・りんご

・じゃがいも

・玉ねぎ

・豚肉

・歯ブラシ4本

・牛乳

・レジ脇のチラシを一枚もらう

 簡単なリストなので普通に憶えられるとは思いますが、これを「記憶の宮殿」に置いて記憶してみます。

 まず最初はりんごです。これを郵便受けに置きます。視覚、嗅覚、触覚、味覚、食感、重さなど、りんごのあらゆることをイメージしながら、郵便受けに置きます。

 次に、じゃがいもです。これは、玄関の中に置きます。玄関の扉を開けると、下駄箱からじゃがいもが溢れ返っています。じゃがいもの山を乗り越えて中に入ります。

 廊下の壁には、たまねぎ頭の永沢くんの写真が飾ってあります。ちびまる子ちゃんの登場人物の永沢くんです。「本当にたまねぎが欲しいのかい?よく考えてごらんよ」と疑いの目を向けてきます。

 私は帰宅するとまず寝室に向かうので、次は寝室です。寝室では、豚肉のドレスを着たレディ・ガガが寝ています。ベッドに豚肉のドレスを着て寝るのは勘弁してほしいものです。臭いがひどいです。

 そのあとはリビングに行きます。リビングのテーブルには椅子が4つありますが、そこに擬人化した歯ブラシが4人座って議論しています。「シャカシャカ」と言っています。

 キッチンで蛇口をひねると、牛乳が出てきます。

 最後に浴室に入ります。すると、壁一面にチラシが貼られています。一面ビッシリです。

 

 私も初めて作ってみましたので、あまり上手にできていないかもしれません。

 しかし、こうやって「記憶の宮殿」を作ってみると、ただ買い物リストを思い出そうとするより、「記憶の宮殿」をたどる方が簡単に買い物リストを思い出すことができることを実感しています。

 活用できるようになれば、置く場所の多さ毎に宮殿を使い分けて、違ったテーマの記憶をいくつも整理できるようになるそうです。

 皆さんも、まずは遊び感覚で「記憶の宮殿」を作ってみてはいかがでしょうか。効果を実感できると思います。

 

終わりに

 このまとめ記事を書くにあたり、「記憶の宮殿」の記事で、私自身が記憶の宮殿を作って憶えた買い物リストを思い出してみました。

 憶えたのは3日前になります。普段は私は、買い物リストをメモした紙を持って、お店に行くのですが、3日前にメモした買い物リストの内容は全く思い出せません。

 しかし、「記憶の宮殿」で覚えた買い物リストについては、今でも簡単にはっきりと思い出せます。

 ポストにりんご、下駄箱にじゃがいも、廊下に永沢くん、ベッドに豚肉のドレスを着たレディ・ガガ、リビングのテーブルには4本の歯ブラシ、キッチンに蛇口から牛乳、浴室の壁にはチラシがびっしり。

 3日経って思い出してみて、改めて効果を実感しました。

 本書では、他にもいろいろな記憶法や記憶のコツが紹介されています。

 なんだか人生の裏ワザを教えてもらっているかのような、そんなワクワクドキドキを感じながら読める本です。

 また、著者が記憶力をどんどん身に付けていくストーリーは、人間の可能性を感じさせてくれます。記憶力自体に興味のない方でも楽しめると思います。

 ぜひ、ご一読されることをオススメします。

 

 

 

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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それでは、また別の記事でお会いしましょう。

 

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